胃癌の原因の99%はピロリ菌の感染とされています。胃カメラで一度、検査してみませんか?もしピロリ菌の感染があれば、内服薬にて治療します。すっきりしない胃の症状が改善されることもあります。

概要

ヘリコバクターピロリ菌、通称ピロリ菌は胃の表面に住みつく菌で、感染したまま放置しておくと慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、そして最も恐ろしい胃がんなどを引き起こすとされています。

1982年、オーストラリアの研究者が自ら菌を飲むことによりピロリ菌を発見し、2005年にはこの功績によりノーベル医学生理学賞を受賞しています。ピロリ菌の感染率には衛生環境が関連するといわれており、日本では中高年に多い傾向にあります。
ピロリ菌は1~2週間の治療で除菌することが可能です。また、ピロリ菌感染と胃がん発症の因果関係が報告されており、胃がんの原因の99%はピロリ菌の感染とされています。日本において胃がんは患者数が多いがんであり、胃がんを予防するという意味でもピロリ菌除菌の有用性が示されています。

原因

ピロリ菌の感染経路に関しては、現在のところ完全にはわかっていませんが、経口感染するのではないかと考えられています。具体的には、ピロリ菌に感染している大人から赤ちゃんに口移しで食べ物を与える、糞便に汚染された食物・水の摂取などが考えられます。
また、衛生環境がピロリ菌感染に関係していることがわかっています。そのため、発展途上国においてピロリ菌感染者が多く認められます。日本においては、戦後恵まれない衛生環境で過ごさざるを得なかった60歳以上の80%が感染しているとされていますが、衛生環境の改善に伴い若年層の感染率は減少傾向にあり、10代以下の感染率は10%以下といわれています。
また、ピロリ菌に感染する時期としては、ほとんどの場合、免疫機構が十分に発達していない乳幼児、特に4歳以下であるといわれています。

症状

ピロリ菌に感染しても、初期のうちは特徴的な自覚症状がないことがほとんどです。しかし、感染したまま放置しておくと、胃のむかつき、胃の痛み、吐き気などの自覚症状が認められるようになることがあります。全く症状のない方も少なくありません。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍は、ピロリ菌感染者の約10%程度に生じるとされています。また、ピロリ菌に感染し数十年の経過を経ると、約3%程度胃がんに発症する可能性が上昇するといわれています。

検査・診断

ピロリ菌感染を調べる検査はさまざまで、当クリニックでは、主に胃カメラ (上部消化管内視鏡)にて組織を採取して調べる方法、吐いた息にて調べる方法、血液検査にて調べる方法、便にて調べる方法を採用しています。

・胃カメラにて組織を採取して調べる方法
ピロリ菌が持っているウレアーゼという酵素が試薬内の尿素を分解してアンモニアを生じさせることを利用した方法です。生じたアンモニアによりpH指示薬に色調変化がおこり、ピロリ菌が感染しているかどうかを調べます。

・吐いた息にて調べる方法
尿素呼気試験と呼ばれ、検査用の薬を服用する前と後に呼気を採取する簡便かつ精度の高い検査です。

・血液検査にて調べる方法
血中のピロリ菌に対する抗体を調べます。

・便にて調べる方法
糞便中のピロリ菌抗原の有無を調べる検査です。

治療

ピロリ菌の除菌治療には、胃薬であるプロトンポンプ阻害剤 (ランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、エソメプラゾール、ボノプラゾンのいずれか) と「アモキシシリン」「クラリスロマイシン」という2種類の抗生物質を組み合わせた多剤併用療法が行われます。これら3種類の薬を1日2回7日間続けて服用します。この1次除菌治療で70%以上の方が除菌に成功し、治癒します。

2015年に発売されたボノプラザンを用いた除菌療法が、現在主流となっており、ボノプラザンを用いた場合、90%以上の成功率となっています。 1次除菌治療終了後、4週以上期間をあけてから再度検査を行い、除菌できているかを調べます。治療に使用するプロトンポンプ阻害剤は、薬の服用を中止してからも4週程度ピロリ菌に対する静菌作用が続くとされています。そのため現在の指針では、1次除菌治療終了後4週間あけてから検査を実施することになっています。
1次除菌でピロリ菌が消失しなかった場合には、「クラリスロマイシン」を「メトロニダゾール」に変更し、同様に1日2回7日間続けて服用、2次除菌を行います。2次除菌まで行った場合には、全体の90%の方が治癒できるとされています。
残念ながら2次除菌でも除菌に成功しない方も少なからずおられます。この時は自費診療にはなりますが、抗生剤を「レボフロキサシン」に変更して3次除菌行うことも可能です。当クリニックにご相談下さい。